危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
 達也の言っていることがわからないわけではない。きっと達也なりに辛い立場なのだろう。互いに親が望むような生き方を、無自覚に選んできたからこそ、このような歪んだ結婚をしようとしていたのではないか。

「私たち、お互いのことがなにもわかっていなかったんだと思う」
「すみれは真面目すぎるんだ。社会人になっても男と火遊びの一つもしたことがないだろう。狭い世界から出たことがないから、自分の価値観以外のものを認められないんだ」

 妙に理屈っぽくて、一見正論だが、その実自分を正当化し、すみれの心の狭さを責めている。

 ──負けちゃ駄目……。

「私の気持ちは変わらない」
「すみれ……考え直してくれ。できることならなんでもするから」

 無理やり抱きしめられ、唇を押し付けられた。嫌悪に肌が粟立つ。
< 110 / 284 >

この作品をシェア

pagetop