危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
阻むもの

 
 翌日、早く帰宅した父の部屋を訪れ、意を決して話を切り出した。

「どうした? すみれ」
「話があります」

 思わず声が震える。すみれに対して声を荒らげたり、手を上げたりすることはなかったが、父がどれだけ恐ろしい人かは身に染みて知っている。自分の意に沿わない人間にどれだけ冷酷になれるかも、身近で見てきた。
 父の前では自然と委縮してしまう。父といってもあまり身近に感じることはなかった。
 だからこそ、すみれは従順にふるまうことで父と衝突することを避けてきた。

 深く書斎の椅子に腰かけたまま、父は尋ねた。

「達也くんのことか」
「聞いているんですか」
「あぁ、いずれお前が知るとは思ってはいたがね」
「……」

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