危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
「婚約中なんて一番楽しい時期じゃないの? 結婚式の準備が忙しいとか? 私みたいに普通の結婚式でも大変だったからセレブの花嫁さんは大変でしょうね」
他の人に言われたら、皮肉に思える発言でもさばさばした鈴木なら気にならない。
「実は……婚約をなかったことにしたいと思っています」
いずれ職場にも知られることだ。それに一人で抱え込むのも限界だった。
「そりゃまたどうして……。女性関係?」
こくりと頷く。鈴木が嫌悪に眉を顰めた。
「はぁ……男ってしょうもないわね。はたから見て完璧すぎる結婚だから、人にはわからない苦労もあると思ってたけど、まさかそんなことになってるとは思わなかったわ」
初めて人に話したことで気が抜けてぽろぽろ涙が出てきた。
「若いから大丈夫。体のことは心配だけど、それだけ気を付けたら、婚約破棄なんて大したことじゃないわよ」
「そうですね」
父が強固に結婚をすすめたがっていることから、家をまず出ようとしていることも伝えると、鈴木が保証人になるとまで言ってくれた。
「でもそこまでさせるわけにはいきません。こうして相談に乗ってくれるだけでありがたいです」
「いいわよ。あなたがもし払えなくなっても絶対に取り立てるから」