危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
 からりと笑う鈴木に頭を下げ、好意を受け入れることにした。

 秘密で引っ越しの準備をするのは容易ではなかった。家に常駐している家政婦はなにかあれば父に報告する。部屋をまず契約して、家電などは少しずつ買い足せばいい。

 気になるのはやはり片桐だった。
 突然すみれがいなくなっても彼は気に留めないかもしれないと思うと、寂しくなる。胸が切なくうずく。

 いよいよ家を出る前の日。予定では、朝最低限の荷物をもって会社帰りにそのまま新しい部屋に行ってそのまま帰らないつもりだった。
 父が仕事で2週間ほど海外に行っている。その間に決行するつもりだった。

 あのあとも達也には別れたい旨を何度も伝えたが、彼が頷くことはなかった。
 達也と二人の話し合いで終わらせたかったが、難しいかもしれない。
 それに達也の祖父の援助がなくなった父がどうするのか考えるのは恐ろしかった。けれどこれから一生父に従って生きていくのはもう耐えられそうになかった。

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