危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
揺れる心 ※蓮視点

「さようなら」

 そう言って、去ったすみれの背中を見て、蓮はひどく動揺していた。
 理由はわかっている。認めたくはないけれど。

 短い付き合いだが、すみれの意思の強い性格を考えるともう戻ることはないだろうことはわかる。それはすなわちもう自分と関わることもないということだ。
 まるで振られたみたいな気持ちになって、未練たらしく電話番号を書いた紙を渡してしまった。おそらくすみれは連絡してこないだろう。海へ行ってからは、すみれにはそっけない態度を貫いた。
 そのことですみれが傷ついているのに気づきながら、黙殺した。

 達也のことで落ち込んでいるすみれにわけもわからず苛立った。
結婚前にわかってよかったじゃないか。
 あんな男のことは忘れてしまえ。身勝手だとわかっていながら、すみれの一挙一動に心が揺れる。すみれの周りの人間は父親含めすみれの幸せなど考えちゃいない。
< 121 / 284 >

この作品をシェア

pagetop