危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 海へ行った日、どうしようもなくすみれを自分のものにしたいと思った。
 父親に利用され、婚約者に裏切られたすみれを哀れだと思った。同情と好意を混同しているのかもしれない。きっとそうだ。

 だが全て自分が宝来家に近づいた目的を考えれば、バカげたことだった。
 
 殺してやりたい宝来正道の前で、従順な秘書を演じるのは簡単なのに、すみれの前では自分を律するということができなくなっている。
これは一体どういうことなのか。自分の心が思い通りにならない。
 
 蓮が一人思いを巡らせていると、インターフォンのベルが鳴る。
 週刊風月の記者、北田英二が蓮の住むマンションを訪ねてきた。

「久しぶり。どうだ。大臣殿の秘書仕事は」
「アポなしで来るのはやめてほしい」

 玄関の扉を開けて、そう言うと北田は笑う。
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