危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
「親の仇討ちとは、泣かせるじゃないか。そこは記事にできないのが残念だよ」
ふふ、と下卑た笑いをする。この男のこういうところは、一生好きにはなれまい。
「上條との結婚後に一気に両家のスキャンダルを出そうと思ったんだが、どうやらお坊ちゃんの女関係で揉めてるらしいね。上り詰めたところを堕とす。これが一番なのは変わらないが、破談になるならすぐに記事を出してもいいかもしれない」
「もうかぎつけたのか。さすがだな」
「もちろん。取材力だけで食ってる記者を舐めるなよ」
皮肉にも動じず、北田は誇らしげに笑う。
蓮はこの男の抜け目のなさにぞっとした。味方であるうちは頼もしいことこの上ないが、今はそらぞらしい気分が抜けなかった。
「情報が早いな」
「当然。それが仕事だからね。上條達也も今はヤケクソみたいに遊びまわってる」
握りしめた手の爪がてのひらに突き刺さる。達也を嫌悪した。それと同時に自分もまたすみれに害をなす人間となることを思い出す。
──あいつを軽蔑する資格なんぞ、俺にはない。