危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 視線を感じたのか、片桐蓮が振り返る。

 長い前髪が風になびいている。その瞳がすみれの存在をとらえて、色を変える。

 手足の長いすらりとした体躯に、切れ長の目が印象的だった。誰にも媚びない意思の強さを感じる瞳は、どこか怜悧に見える。
 時々父の車を運転する姿は見たことがあるが、間近で彼を見たことはない。
 怖いくらい整った顔立ちは、感情をなくしたように見える。

「お嬢様」


 慌てて、手で涙を拭う。こんな顔を見られるわけにはいかない。
 主役の自分がパーティーを抜け出して、一人で泣いているのを見られたらどう思われるだろう。

「どうぞ」

 ハンカチを渡され、パーティーバッグを忘れてきたことに気づく。

「ごめんなさい。みっともないところを見せて」
「あそこは気詰まりでしょう」
「え?」
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