危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
「なにが義姉さんよ! 私の気持ちを知ってるくせに! どうして不幸になるような相手を選ぶのよ」
「ごめん……」
自分の背で泣きじゃくる麻美の手をほどき、蓮は扉を開けた。
「一体どうするつもり? 自分の両親を殺した人間の娘と一緒になるなんて、天国にいるお父さんやお母さんに言えるの!?」
背中に向けられる声は悲痛で、罪悪感で苦しくなる。
幼い頃から蓮を気にかけ、救おうとしれくれた麻美を好きになれれば、きっと誰も不幸にすることはなかっただろう。
自分でもとうしてこうなったかはわからない。心はひどく不自由で、自分の意思ではどうにもならないこともあるのだと、すみれに出会って知ってしまった。
「私じゃなくてもいい。どうして他にもたくさんいるのに、あの娘なの。誰も幸せになれっこないじゃない」
誰も幸せにしない。
そうだ。自分はそういう人間だった。誰にも心を開かず、誰も愛さず、誰も頼らない。そう思って生きてきた。
まっさらな気持ちですみれと手を取り、生きていけたらどんなにか幸せだろう。
けれど、それはまるで絵空事のように現実味のない希望だった。