危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
本来なら、秘書とはいえ片桐が触れていい書類ではない。だが、隙をついて金庫の合鍵を作るのに成功した。
調査もばれれば犯罪となりかねない危険な賭けだった。
娘の婚約パーティーでの上機嫌な様子を見ていると、怒りでどうにかなりそうだった。頭を冷やすため夜風に当たっていると、主役であるはずの娘が泣きながらやってきた。
──幸せな席でなぜ。
そんな疑問が浮かんだが、どうなろうが自分の知ったことではない。上條達也の悪い噂はいくつか耳にしてはいたから、結婚も不吉な門出となるのかもしれない。
部屋のチャイムが鳴り、ドアを開けると一人の中年男性が立っていた。
「よう。久しぶり」