危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 ぴんと張り詰めた糸は無理やり触れたら切れてしまうから、触れないように、体を重ねることでごまかしながら、続けた関係だった。
 いつか終わるかもしれないというそんな予感は、どんなにきつく抱きあっていても消えるものではなかった。

 
戻れない日々


 週刊誌に北田が記事を出した。すみれに連絡してもしばらくは繋がらず、体調を崩して入院していると知り、ようやく会うことができた。
 病室には達也がいて、二人はよりを戻すのだと言った。
 おそらくは嘘で、宝来正道の過去が原因だろうと思った。優しいすみれには、父の罪が耐えられなかったのだろう。

 真っ白で表情をなくしたその顔を見て、すみれがどれだけ精神的に追いつめられているかわかった。なにを言っても別れるの一点張りで、微動だにしなかった。
 愛を確かめ合った記憶などなかったかのように、すみれは一切迷いがなかった。

 その後も、何度か連絡をしたが、返事はなかった。未練がましく部屋も訪れたけれど、すでに部屋は解約されたあとだった。

 本当に終わりなのだ。
 
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