危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

7章 それぞれの道

雪に沈む

 しんしんと雪が降る。
 
深く降り積もる雪が、凝った心も閉じ込める。

 これが雨ならば、霰ならば、こんなふうにすみれの心を穏やかにしてくれることもなかった。ただ雪は静かに、世界を白く染めていく。その中ですみれはひっそりと、ゆっくりと自分を取り戻していった。

 蓮と別れてすぐ、衝動的に祖母の住む家に逃げるようにやってきた。

母の実家のあるこの町に十四の秋から数か月だけ住んだことがある。前に来たのも、やっぱり木枯らしの吹き始めた冬だった。春が来る少し前、何事もなかったかのように東京へと戻った。

 病気で休みがちなすみれは学校での交友関係もうまく行かなくなり、ある日声が出なくなった。
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