危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 蓮が宝来正道の事務所で得た書類のコピーを見て、北田が前のめりになる。

「どれもこれも一件だけでも十分なスキャンダルだ。よく集めたな。よほど信頼されているのか」
「1割は職務上、残りの9割は非合法な手段で得た」
「ははん、将来法曹を目指してたエリートが、そんなことまでするとはね。亡き両親のためだなんて、泣かせるねぇ。たとえ法に反しても賞賛に値する」

 北田が思ってもないことを言う。この男にあるのは、記事をいかにスクープするかだけだ。宝来正道にとって最悪のタイミングとなるよう息をひそめて待っているのだ。
 
 この男と初めて会ったのは2年前。蓮が法科大学院に入学した頃だった。「両親の事件のことを調べている」という北田の話を蓮が無視することなどできなかった。

「しかし、あんたが宝来のところへ乗り込むって聞いた時は正気を疑ったけど、うまいことやってるみたいじゃないか」
「正気を疑う割には、ずいぶん協力的だったじゃないか」
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