危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
蓮の偽装身分証を作ってくれたのは、北田だった。週刊誌の記者というのは、スクープのためならそんなことまでするのかと少々呆れたものだ。
「ま、そりゃ危ない橋を渡ることにはなるけど、宝来を引きずり下ろせるなら多少のリスクはやむを得ない」
この計算高く、利己的な男を信頼しているわけではもちろんなく、宝来正道という共通の敵と共闘するために互いに利用しあうだけの関係だ。
「巻き込んだ俺が言うのもなんだが、あんまり深入りする前に手を引いたほうがいい」
「忠告はいらない。あんたが俺に宝来正道が両親を殺したのだと教えてくれなければ憎しみを向ける相手すらいなかった」
蓮が10歳の時、弁護士をしていた父は、事務所で何者かに殺された。
犯人とおぼしき人物は、警察に指名手配された直後に自殺してしまった。その男が宝来正道に依頼されたと、死ぬ前に知人に話していたと知り、北田はその件を追っている。