危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
自分の両親がなぜ殺されなくてはならなかったのか。それが知りたい。
片桐を動かすのはその一心だった。そのためなら多少自分も汚れても構わない。復讐に魂を売り渡した時点でとっくに汚れてしまったのかもしれないが。
片桐という苗字は偽名だが、名前は敢えて本名にした。
宝来正道は、そのカリスマ性と有言実行で今や国民の人気が一番高いといってもいい政治家だった。まだ50代後半だが、影の総理とさえ言われている。
最近はすっかり誠実な政治家の代名詞にまでなっている。すらりとした体躯と、整った顔立ちで政党の顔としてもぴったりだった。
「もっとちゃんとした証拠が欲しい」
「ああ、お前さんも気をつけな。バレたらただでは済まない。最悪東京湾に沈められるかもしれん」
けらけらと愉快そうに北田が笑う。もし蓮が宝来正道に殺されたら、北田はそれを記事にして一儲けすることだろう。