危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
 片桐蓮と顔を合わせるのは、婚約披露パーティー以来だった。

 すらりとしてはいるが、ほどよく筋肉の付いた体つきに、鋭い目。そこに浮かんでいるのは、完璧な微笑。ゆえに真実味がない。
 形の整った輪郭の中にある瞳にはなんの感情の色も映していない。

 ──きれいな顔。

 特に鼻の形が完璧だと思った。男性にしては少し整いすぎた顔立ちは、絵が趣味のすみれの絵心を刺激した。どこかしらミステリアスな雰囲気から目を離せない。
 父も片桐を全面的に信頼しており、宝来家にも頻繁に出入りするようになったのはここ最近のことだ。まだ若い片桐が父の片腕として公私共に支えていることは、最近では皆の知るところでもあった。

「ちょうどいい。今すみれが出かけるところだ。頼むよ」
「はい」
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