もっとドキドキさせて
学校に行くと1日はあっという間に終わってしまう。
家に帰っても、習い事、勉強…とやること尽くしだ。
そんな忙しいスケジュールの中でも怜は、お風呂と寝るとき以外、私の付き添いをしてくれる。
怜が専属執事になって10年近く経つが、1日たりとも私のお世話係を休んだことはない。
とは言っても3年ほど前までは、怜自身の勉強タイムがあり、別々の時間を過ごすことがよくあった。
こんなに長い期間一緒にいて、年齢もそこそこ近いのに、怜は私に対して特別な感情を抱いたりしないのだろうか。
私に魅力がないから…?
と考えてしまうと、また暗い気持ちになってしまうから、今はあえて考えない。
全てのスケジュールをこなして、やっと寝る時間になった。
この寝る前のほんの少しの時間が、私の自由時間だ。
お風呂からあがり、ほかほかの身体が冷めないうちにベットに入る。
時計を見ると21時を少し過ぎていた。
「お嬢様、就寝まで少しお時間があります。お一人で自由な時間を楽しまれるのでしたら、私は席を外しますが…」
怜はそう言いながら、部屋を出る素振りを見せた。
私と2人きり、何もすることがない間ができると、怜は毎回こうして私から離れようとする。
いつもだったら、出ていく怜を引き止めることはしないのに、今日は何故か引き止めたくなった。
「待って、一緒にいて」
こんなことを言ったのは初めてかもしれない。
無意識に怜に、拒絶されることを避けていた。
怜は一瞬、狼狽えたが私の命令には背けられない。
「はい」
と言い、ベットの横にある椅子に腰をおろした。