もっとドキドキさせて
ベッドの脇に椅子を置いて、一緒にお茶を飲んでくれている玲をちらっと横目で見た。
お茶を飲むことに集中しているみたいで私のほうは、まったく見ない。
シーンとした部屋の中で、お茶を飲む音とティーカップを置く音だけが響く。
あと一口で飲み終わってしまう。
終わったら、玲と過ごす時間も終わってしまう。
「手を握ってほしいの」
言いしれぬ心細さから、本音が漏れてしまう。
しまった、と思うのは遅く
「申し訳ございません、お嬢様……ですが…」
と戸惑う玲の声が反響して聞こえた。
「ごめんっ!嘘!お茶美味しかった。ありがとう」
恥ずかしくなった私は、ティーカップに入ったお茶を、クイッと飲み干して、勢い良く布団の中に潜り込んだ。
しばらくすると、カチャカチャという食器を片付ける音とともに
「おやすみなさいませ。お嬢様」
という静かな玲の声と扉を閉める音が聞こえた。