もっとドキドキさせて
「ねー、あの執事くん、かっこよくない?」
「まあ、本当。どなたの執事なのかしら」
ふたり組の女子が、何やら楽しそうに、イケメン執事探しに夢中になっている。
ちらっと、ふたり組女子の視線の先を見ると、玲が立っていた。
やっぱり、他人の目から見ても、玲はかっこよく見えるみたい。
嬉しいような、モヤモヤするような複雑な感情だ。
玲はかっこいいもんね。
そう思いながら、その場をあとにした。
―――――
「ねぇ、今日の昼休み、女子が玲のこと見て『かっこいー』って言ってたよ」
夕食後、部屋に戻ると、玲は紅茶の用意を始めた。
昨日の夜のこともあって、シーンとした空気に耐えられず、思わず話しかけていた。
「それは、ありがたいことです」
本当にそう思っているか疑わしい表情と声で、玲は紅茶を淹れる。
「本当にそう思ってる?」
「思ってまいますよ」
「ふーん、じゃあ私が玲のこと『かっこいいー』って言ってても嬉しい?」
?!
思わず口に出てしまい、自分でもびっくり。
最近の私は抑えが効かなくなっている。
またやってしまった…と思いながら玲の顔を見る。
「お嬢…様?」
なんと玲は予想外の顔をしていた。
顔が真っ赤だ。
焦っている私と、顔を真っ赤にした執事。
どうしたらいいのか分からない状態になっている。
どうしようどうしようと慌てる私を置き去りに、玲はなんとか平静を取り戻したようで
「お嬢様はご冗談がお好きですね」
といつもの様子に戻ってしまった。
残念なような…ホッとしたような。