この度、友達やめます。

「あのさ…
さっきの話、ウソじゃないよ」



ファミレスの帰りに水ノに言った



「さっきのって?
笹川が岸(きし)さんといいカンジだって話?」



「それもウソではないけど」



「笹川がバイトの面接で
自分の名前間違えた話?」



「それは水ノが言ってたやつでしょ
ウソだったの?」



「や、ホントに」



「バカじゃん、笹川」



「うん、バカ
それウソじゃない
オレウソつかない」



「水ノ、なんでカタコト?」



「え?
吉永が今度焼肉奢ってくれるって話だっけ?」



「そんな話してない」



「してないっけ?」



水ノ、わざと?

わざと惚けてるでしょ



「うん、してない
じゃあ、いいや…」



言えない

水ノも聞きたくないんだ



「遠いの?そこ」



「え?」



「吉永の転校先
休み時間には喋りに行けない距離かもだけど
すぐ会いに行ける距離?」



水ノ、やっぱりわかってて惚けてた



「会いに…どーかな…」



水ノ、会いに来てくれるのかな?

本気で会いたいなら
距離とか関係なく
どーしたって来れるよ



「自転車?車?新幹線?飛行機?船?
それともロケット?
何で行ける場所?」



走ったって

泳いだって

なんだって

本気で会いたい人には
会いに行くよ



「水ノなら歩いて来れるかも…」



「へー…じゃあそんな遠くないんじゃん」



「歩いて3ヶ月ぐらいかかるかも…」



「は?
往復半年かかんじゃん!」



「うん
水ノ、バイトしてないからお金ないでしょ
徒歩しかないでしょ」



「バイトしとけばよかったー」



バイトする気もないし
会いに来る気もないんじゃないの?


だから
教えない



「新しい友達できるかな?」



水ノみたいに話し掛けてくれる人いるかな?



「吉永、楽しみなの?」



な、わけない



「んー…どーかな…」



不安だよ

不安しかない



「毎日LINEしてもいい?」



「今も毎日してるじゃん」



「新しい友達できたら
オレなんかあっさり捨てられるのかな…って」



「それ、水ノが言える立場じゃないよね?」



「はい、スミマセン」



「返信遅くなるかもー」



「通話もビデオ通話にしよ」



「なんで?
別に顔見なくていい」



「ま、ハズいよな
けど、たまに変顔見たいし…」



「いいよ無理しないで
そのうち自然と忘れていってよ」



私の本心は
自分でもわからない


どんな気持ちで
水ノにサヨナラしていいかわからない



水ノとはただの友達でもなかった

親友だと思ってたけど

彼女にもなった



「オレ、吉永のこと忘れられない」



そう言って水ノは私の手を繋いだ



久しぶり

水ノの手の温もり



咄嗟でドキドキする間もなかった

吸った息で胸が苦しくなって
鼻がツーンてした



「吉永のこと
オレ、一生忘れないと思う」



私も忘れないと思う

だって初めて好きになった人だもん



この手の温もりも

別れる直前に重なった唇の温度も

一生忘れない



そう誓った夜は
空の星が綺麗だった



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