この度、友達やめます。
「身にしみる〜
ってオレ、オッサンかな?」
「宮川さん30でしたっけ?」
「勝手に四捨五入すんな」
「互いに年はとりますよ
私も入社して約2年です」
「後輩に言われると
なんか身にしみる」
「まぁ飲んでください
宮川さんのおごりですけど…」
宮川さんにお酌した
「勝手におごりにすんな」
「いつもおごってくれるじゃないですか
私じゃなくて他の人誘ってくれてもいんですよ
もしくは綺麗なお姉さんのいるお店行くとか…」
「吉永でいいや…」
「いいや…って
その諦めたカンジやめてください」
「この前の友達の結婚式どーだった?」
「んー、幸せそうでした」
「そーか…
なんか、あった?」
「なんかってなんですか?」
「結婚式行ってきてから
なんか吉永考え込んでるな…って思ってさ」
「宮川さん、よく見てますね
今日はちょっと話したいことがあって…」
「うん、なに?
もしかして、男?できた?」
水ノのことは宮川さんに言わないつもり
水ノと私の関係もよくわからないし
とりあえず友達は友達らしいけど
宮川さんに他に聞いてほしいことがあった
「あの、ですね…
ぜんぜん期待はずれな話なんですけど
私の親の仕事って転勤職で
来年また引っ越すことになるみたいなんです」
結婚式から帰って来て
数日後にその話をされた
水ノのことばかり考えてたけど
もうひとつ考えることができた
「学生のうちは親について転校してましたけど
社会人なのでここで独り暮らしをして
今の仕事を続けることもアリっていう
選択肢ができたわけで…」
「なるほど…
遠回しに仕事を辞めたいと?」
「いえ、今の話の流れだと
ここで仕事を続けるってカンジでしたよね?」
「だから遠回しにって言っただろ
この話のくだりは
でも…親と一緒に…って話だろ」
「それもちょっと違って…
…
親について行かないとして
ここに親戚もいないし
ゆかりがあるわけじゃないし…
私も大人なんだから
自分の好きな場所を選んでいいとしたら
どこがいいのかな?って…」
「ここが好きじゃないと?」
「好きじゃないわけでもないですけど
ここじゃなくてもいいのかな…って…」
「何もないけど…オレがいるから…」
「…」
「オイ!なんか言ってよ」
「…ですね」
「ですね…ってオイ!
オレじゃなくてもさ
大学の友達とか…
そもそも大学こっち選んでんだから
ここから離れたいとかなかったんだろ」
「はい
特にどこってなかったし…」
「じゃあ、特にどこって場所ができたんだ?」
「え?」
「吉永が今、思い浮かぶ人の近くに行ったら?」
「思い浮かぶ…人…」
親でもなく
大学の友達でもなく
宮川さんでもなかった
水ノだった