この度、友達やめます。

やっぱり帰ろうかな…

これから帰るとかアリですか?

ホントは明日水ノが来る予定だったから
帰ってパックしようと思ってたんだよね

ネイルもしたかった

会っちゃったし…今更だけど

メイク落としちゃったし…

たいしたメイクじゃなかったけど

こんなにすぐに素肌見せてもいいのか?

先週も見せたか…



水ノが急に近くなった



え!なに?



ドキン…



水ノが照明のスイッチに手を伸ばして
また部屋が暗くなって天井が光った



なんだ…

照明おとしたかっただけか



うん、こっちの方が見えなくていいや

水ノも見たくないんでしょ

私のスッピン

え?私に気使ってくれた?

水ノってそんな気のきく男だった?



水ノがベッドに仰向けになった

え、まさか水ノ寝るの?

それで電気消しただけ?

消灯?



「水ノ、眠いの?
疲れたよね」



「吉永もちょっと寝てみて…」



え?誘われてる?

え?いいの?

いいのも何もこーゆーホテルだし…ね



ゆっくり水ノの隣にカラダを倒した



どれくらいの距離がいいのかわからない

水ノには1ミリも触れてない



「なんかコレ、花火みたいじゃね?」



水ノに言われて天井を見上げたら
天井のネオンが花火みたいだった



「ホントだ…花火みたい」



「なんか、思い出さね?」



水ノ、あの時の花火のこと言ってる?

付き合ってた時
ふたりで浴衣で行った花火

私、足が痺れて立てなかったんだよね



「吉永、笑ってる?」



「え、あ、うん…
ちょっと思い出してね…」



「なに?
吉永の足が痺れたやつ?」



「え!水ノ覚えてるの?
そおそお、情けないよね
せっかく水ノ、浴衣褒めてくれたのにさ…」



「浴衣褒めたわけじゃないけどね」



「え?そうだっけ?
水ノ、綺麗だね…とか言ってくれなかった?
え!もしかして、花火のことだった?
ヤダ…恥ずかしいじゃん!」



「今日も…綺麗」



勘違い恥ずかしすぎるし



「うん…花火みたいで綺麗だね
バスローブで見るとか笑えるね
ま、ちょっと浴衣みたいだしね」



水ノ、笑ってない?

私と水ノのテンションも
なんか違いすぎて恥ずかしくなる



あー…最悪



「吉永が、綺麗」



隣で水ノがそう言った



え?



私…?



ベッドの上にいることを思い出した



ドキン…



「水ノ、酔ってるの?」



水ノが見れなくて
天井を見ながら聞いた



「酔ってない」



「酔ってないのに、そんなこと言うんだ」



「別に口説いてるとかそーゆーんじゃなくて…

花火の時も浴衣じゃなくて
吉永を褒めてたつもり

今日も、綺麗」



ドキン…



水ノ、急になに?



「暗くてよく見えないのに
そんなこと言って…」



「今日、会ってから
ずっと思ってた
先週も思ってた」



やっぱり同級会でよくあるやつ?



「その割に水ノ
今日テンション低めだったじゃん!
なんかウソっぽい」



「さっきは、吉永の先輩にちょっと嫉妬した」



水ノ、拗ねてたの?



「なんで?
宮川さんはただの上司だって…」



「オレはこの1週間
吉永に会えなくて今日やっと会えたのに
あの人は毎日吉永と一緒なんだろ」



「うん…
会いたくなくても職場が一緒だからね
必然と会うよね」



「羨ましいと思った」



そんなことで嫉妬する水ノって
ホントに私のこと好きなのかな?


自惚れ?



「吉永…手繋いでもいい?」



「え、うん…」



ゆっくり私の手に水ノの手が絡む



充分ドキドキするけど
ちょっと肩透かし



#こーゆーホテル
#ベッドの上
#シャワー浴びた
#バスローブ



これだけのワードが揃ってるのに
手なんだ

しかもちゃんと確認する水ノが
なんか愛おしくなった



「オレ、スゲー、ダサ…」



「ん?なんで?」



「くだらないことで嫉妬したり
こんなことで
スゲー、ドキドキしてるから…」



水ノもドキドキしてるんだ

ダサくなんかない

嬉しいよ



「水ノっぽくていいよ」



「なにそれ?」



ふたりの声が順番に天井に響く



「吉永…また浴衣で花火行こう」



「え、うん」



花火+浴衣=付き合ってる



付き合ってる、の?

私たち



「吉永がよかったら
あの日の続きから始めたい」



「あの日って?」



「高2の夏休み
吉永が、キスしてくれたところから…」



キス



やっぱりしたよね?

しかも私が



そしたら
水ノが別れようって言ったんだ



「水ノ、覚えてた?」



「うん、覚えてるよ」



指先が熱くなって
ドキドキが増す



あの日が蘇る



「吉永…友達やめよう」



「え?
それ、いつか聞いたことあるけど…
遡りすぎだよ!水ノ」



水ノに初めての彼女ができた時
言われたセリフ



「戻りすぎたか…」



「うん
しかもそのセリフ
ちょっとトラウマかも…」



「ごめん、ごめん…

今度は絶対大切にする

離れてても会いに来る

だから…
また続きから、お願いします」



続きから…



水ノを見たら
水ノは私を見てた



目を閉じて
あの時の水ノを思い出してみる



別れた日も好きだった


今も


水ノが好きだ



目を開けて



「好きだよ…水ノ

ホントは、別れたくなかった

別れてからも
たぶんずっと水ノが好きだった」



気持ちが溢れる



「吉永…オレも好きだよ

いつ言えばよかったんだろう
このセリフ

吉永が転校してから
ずっと後悔してた」



「でも水ノ
ずっと友達でいてくれてありがと

また会えてよかった

友達やめたくないけど
水ノがやめたいなら、仕方ないね」



「もぉ友達に戻る予定はないけど…いい?」



「んー…
そんなこと言われたら、迷うじゃん」



「そんなこと言われても、好きだから」



「私も好き!あ…」



「ずっと好きだよ…吉永」



「うん…」



ーーー



続きのキスは
水ノからしてくれた



「なに?吉永笑った?」



「うん…
水ノ、アイスおごってね」



「あ、それね
うん…永遠にね」



この度、私と水ノは友達やめました



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