※彼の姉ではありません
幌延さんが蝶子さんをさえぎって大声をだした。私もなにか言ったほうがいいのかと思い、口を開こうとした。
「料理なら俺が作るから!」
「えっ」
「いいわねぇ、純くんの料理! 久々に食べたいわぁ」
幌延さん、料理ができるらしい。しかも蝶子さんの口ぶりからすると、けっこう美味しい……?
いや、祖母だからこそ甘い評価をしてる可能性もある。未知数だし、ちょっと心配だ。
御曹司ならば、今まで上げ膳据え膳の生活しかしてこなかっただろうし、作れるって言ってもたかが知れてるとしか思えない。
「私も一緒に作るから、ね? お祖母ちゃん、いいでしょ?」
「なにを言うの? 亜純は帰ってきたばっかりなんだし、少し休みなさい」
……今晩の命運は、幌延さんの手に委ねられると決まった。
「2人とも玄関で立ち話もなんだし、リビングに行こう」
「ああ、そうね。亜純、貴女は今日は座ってるだけでいいからね?」
蝶子さんは「ほら上がって上がって」と私の手をひっぱる。大好きな人を相手にする子どもみたいだ。
無邪気で愛らしい──お年より相手にそう思うのも不思議だ──に私はくすりと笑ってしまう。