※彼の姉ではありません
思っていたほどのショックはなかった。
私に姉になってほしいという要望。双子じゃないかと勘違いしてしまいそうな女性。この条件が組み合わさったなら、今の幌延さんの状況は悪いんだろうとわかる。
病気や事故、最悪の場合は──と考えていたけど、行方不明だったか。
どうしてそんなことに、と訊きたいのを我慢して、私はイケメンをまっすぐ見つめかえした。
「……私をお姉さんにして、なにをさせたいのかをまず教えてください、お話はそれからということで」
「それは……」
イケメンの目が宙をさまよった。こんなことを今日会ったばかりの私に頼んでくるんだもの、事情は複雑で余裕がないんだろう。
……余裕がないのは私も同じか。
「……実は、祖母のためなんです」
「祖母?」
聞きかえした私に、イケメン──もうこの人も幌延さんでいいか──は弓なりの形のいい眉を強張らせた。
「祖母は、姉が行方不明になってからすっかり気落ちしてしまって……たとえ騙すことになっても元気づけてあげたいんです」
これだけ聞くと、お祖母さん思いのいい孫息子だ。私にもおばあちゃんがいるから、なんとかしてあげたい気持ちはわかる。
その話が真実ならば。
私は幌延さんの目をじっと見つめた。そこに不審な光や不穏な陰りは隠されてないか、探ってみる。
「……疑われるのはごもっともです」