※彼の姉ではありません

 アラームの音で目を覚ました。

 確認すると、時刻は午前6時。早いところ起きて準備をしなくちゃ。

 布団をひっぺがしてベッドから起きあがる。カーテンの隙間から朝日が差しこんで、スズメの鳴き声が遠くから聞こえてきた。

 さあ、今日も幌延亜純さんになりきらないと。

 メイクをしてウィッグをつけ、鏡の前でチェックする。うん、どこから見ても亜純さんだ。
 自分の出来に満足した私は、離れと母屋をつなぐドアの前に立った。

 午前6時半。ノックは2回。

 私が「どうぞ」と了承すれば、ドアがガチャリと開いて幌延さんが顔をのぞかせた。目がショボショボしていて、なんだか少し眠そう……?


「おはようございます」

「……おはようございます」


 私の挨拶に、ワンテンポ遅れて返してきた。疲れから回復できてないんだろうか。

 疑念が顔に出ていたらしく、幌延さんは覇気のない笑顔を向けてきた。心配しないで、とでも言うように。


「今日もよろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」


 私が頭を下げると、手に温かな感触があった。なんだろう?

 目を向ければ、幌延さんが私の手をつかんでいた。
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