※彼の姉ではありません
「……知られるのも、時間の問題ですね」
私が独り言のようにつぶやけば、幌延さんが息を呑む音が聞こえた。
しばらく沈黙が続く。ガヤガヤと騒がしい世界で、私たち2人だけがとり残されたような気分になった。
『これから休憩に入るんですが、その時間に家に帰ろうと思います』
「全部お話しになるんですね」
『……はい』
一瞬のためらったあと、覚悟を決めた気配が伝わってきた。だったらと、私も深呼吸して決心する。
「私も連れていってください、一緒に頭を下げます」
幌延さんは、これ以上私を巻きこめないと固辞されてしまった。それでもこの件を引き受けると決めたのは私だ。私にだって責任がある。
そう粘れば、幌延さんは折れてくれた。
私がカフェの場所を教えると、言葉少なに電話を切って、ものの十数分で迎えに来てくれた。
私は無言で乗りこみ、お互いになんの会話もないまま、蝶子さんが待つ家まで順調に到着した。