※彼の姉ではありません
私たちが車から出るのと同時に、蝶子さんが玄関から飛びだしてきた。
「どうしたの? 2人とも青い顔して……」
心配そうな顔に、申し訳なさだけが募る。
「……祖母ちゃんに、話さないといけないことがあるんだ」
「なんなの、改まって?」
「とにかく中で話すよ」
幌延さんは蝶子さんを促し、家に入っていった。私もうつむきながら続く。
リビングまで蝶子さんを誘導し、幌延さんの横に並ぶ。そうして2人そろって腰から身体を曲げて頭を下げた。
驚いてなにも言えない蝶子さんに、幌延さんは順を追いつつ事の経緯を説明した。私は亜純さんではないということ、偶然出会った私に成り代わるよう依頼したこと。
幌延さんは洗いざらいしゃべってしまうと、下げていた頭をあげた。私は蝶子さんの反応が怖くてあげられず、ロングスカートとスリッパを見ていた。
「……前田さん、とりあえず頭をあげてください」
感情のわからない静かな声に、私は死刑囚にでもなった気持ちで頭をあげた。蝶子さんの凪いだ瞳とかち合う。
「知ってたわ、とっくに」