※彼の姉ではありません
軽めのマッシュスタイルは爽やかで、チラッと見える眉は弓なりで形がいい。
その下には出目でぱっちりした明るい目元。鼻筋は滑らかで、大きくも小さくもない。唇は少し大きめで、薄くも血色が良いのがわかった。
いわゆるイケメンてやつだ。
そのイケメンが、目を見開いて私をまじまじと凝視している。彼の時間だけが止まってしまったかのようだ。
なにがなんだかわからない。怖い。
私は逃げようと緑茶缶を入れたバッグをつかみ、腰を浮かせた。
「待ってください」
イケメンが声をかけてきた。わりと低めの声だ。爽やかな印象を受ける顔とのギャップにびっくりした。
「すみません、怖がらせて」
イケメンは礼儀正しく頭を下げる。私は話だけなら聞いてもいいか、とバッグから一応手を離して腰も下ろした。
「本当にすみません、知り合いに似ていたもので、つい声をかけてしまって」
ナンパにしては使い古された手だな、と私はまたバッグをつかんだ。今度はバレないようそっと。
でも、お風呂に入ってなくてメイクもしてないホームレス女を口説くメリットってなんだろう。
「泣いていらしたので、どうしたのか心配になったんです」