唇から始まる、恋の予感
告白した時から時間が経ち、気持ちが落ち着き始めると、部長の何処が好きなのか、なぜ好きになったのかと考えていた。
好きになるのに理由なんかなくて、これだけの人がいる中でたった一人を好きになるのは奇跡なんだと。でも……。
「私の場合は、部長に恋したというより、恋させられちゃったという方が正解かな」
と思っている。
私には青春はなくて、キラキラした思い出も、人の力を借りて何かを達成したことも、一つのものをみんなで協力して作り上げた経験もないけれど、その代わりに部長という最高の宝物を贈ってくれた。
自分以外に興味はなかった私に、恋する気持ちと、何かしてあげたいという気持ちを呼び起こしてくれた部長には、私の気持ちを伝え続けていきたい。
実家から持ってきたアルバムを一人見返す。
忘れていた笑顔も、部長が思い出させてくれた。
写真と言えば、部長のアメリカでの生活がどんな感じだったのか、見せてくれた。
「ここはとにかく美味しかったんだよね。ハンバーガーがこんなにでかくてさすがの俺も食いきれるか心配なくらいデカいんだ。これだけの量を食うんだから、アメリカ人の身体のデカさも納得だよな」
「向こうで住んでた家」
「誕生日の時にみんなが祝ってくれたんだけど、このケーキほぼ原色だと思わないか?」
次から次へと写真の説明をしてくれた。写真の中に部長の生活があった。その中に私がいないことを少しだけ残念に思う。
「うわあ、凄い色。甘そうだけど、美味しそうですね」
ただ写真を見ただけなのに、なんだか楽しくてはしゃいでいたら、
「いつもそうして笑って。でも俺の前限定で」
と言って、キスをする。キスを重ねても慣れるものじゃなくて、とっても恥ずかしい。照れ隠しのつもりで、写真を見たいとねだる。
「あのもう一度……」
「もう一度? いいよ」
何を勘違いしたのか、部長はまた軽くキスをする。
「あ、あのもう一度……」
「もう一度? いいよ、何度でも」
またまた勘違いのキスをする。
「あの、そうじゃなくて、もう一度写真が見たいって……言おうとして……」
「……え……」
スマホの中にある大量の写真は、部長のアメリカ生活5年間の記録だ。私の知らない世界をもっと見たくて、もう一度見たいと言いたかっただけなのに、私がキスを何度も強請ったみたいで恥ずかしくて顔が赤くなる。
「もう……」
「ご、ごめん」
その時のことを思い出して、一人家でにやける私。恥ずかしい場面だったけど、こんな早とちりな部分もあるんだと、部長の違う一面を見られて嬉しい。
部長がもっといろいろな私を見たいと言ったけど、私も部長のことをもっと知りたい。
この先何があっても部長となら乗り越えて行けるような気がする。
過去に縛られて卑屈になっていた私を救ってくれた人だから。
「好きです」
勇気を出して言ったこの言葉を大切に、部長と時を刻んでいこう。
私の大切な恋人と。
好きになるのに理由なんかなくて、これだけの人がいる中でたった一人を好きになるのは奇跡なんだと。でも……。
「私の場合は、部長に恋したというより、恋させられちゃったという方が正解かな」
と思っている。
私には青春はなくて、キラキラした思い出も、人の力を借りて何かを達成したことも、一つのものをみんなで協力して作り上げた経験もないけれど、その代わりに部長という最高の宝物を贈ってくれた。
自分以外に興味はなかった私に、恋する気持ちと、何かしてあげたいという気持ちを呼び起こしてくれた部長には、私の気持ちを伝え続けていきたい。
実家から持ってきたアルバムを一人見返す。
忘れていた笑顔も、部長が思い出させてくれた。
写真と言えば、部長のアメリカでの生活がどんな感じだったのか、見せてくれた。
「ここはとにかく美味しかったんだよね。ハンバーガーがこんなにでかくてさすがの俺も食いきれるか心配なくらいデカいんだ。これだけの量を食うんだから、アメリカ人の身体のデカさも納得だよな」
「向こうで住んでた家」
「誕生日の時にみんなが祝ってくれたんだけど、このケーキほぼ原色だと思わないか?」
次から次へと写真の説明をしてくれた。写真の中に部長の生活があった。その中に私がいないことを少しだけ残念に思う。
「うわあ、凄い色。甘そうだけど、美味しそうですね」
ただ写真を見ただけなのに、なんだか楽しくてはしゃいでいたら、
「いつもそうして笑って。でも俺の前限定で」
と言って、キスをする。キスを重ねても慣れるものじゃなくて、とっても恥ずかしい。照れ隠しのつもりで、写真を見たいとねだる。
「あのもう一度……」
「もう一度? いいよ」
何を勘違いしたのか、部長はまた軽くキスをする。
「あ、あのもう一度……」
「もう一度? いいよ、何度でも」
またまた勘違いのキスをする。
「あの、そうじゃなくて、もう一度写真が見たいって……言おうとして……」
「……え……」
スマホの中にある大量の写真は、部長のアメリカ生活5年間の記録だ。私の知らない世界をもっと見たくて、もう一度見たいと言いたかっただけなのに、私がキスを何度も強請ったみたいで恥ずかしくて顔が赤くなる。
「もう……」
「ご、ごめん」
その時のことを思い出して、一人家でにやける私。恥ずかしい場面だったけど、こんな早とちりな部分もあるんだと、部長の違う一面を見られて嬉しい。
部長がもっといろいろな私を見たいと言ったけど、私も部長のことをもっと知りたい。
この先何があっても部長となら乗り越えて行けるような気がする。
過去に縛られて卑屈になっていた私を救ってくれた人だから。
「好きです」
勇気を出して言ったこの言葉を大切に、部長と時を刻んでいこう。
私の大切な恋人と。