唇から始まる、恋の予感
部長の歓迎会が行われる金曜日がやってきた。
業務を一斉に終わらせ、役員専用のリフレッシュコーナーに移動する。コミュニケーションを取らない私でも、親睦会は参加していた。いくら人と関わらないと言っても会社という組織にいる以上は、参加しておいた方がいいかなと、そんな思いから参加をしている私は、意外と律儀だと思う。参加すれば裏方で何か出来ることもあるし、それに最初の一時間ほどで消えていくように帰ってしまうから、そんなに神経を使うほどじゃないし、参加しないよりはいいかなと思っている。

(お店じゃないからどうやって抜けていくかが問題ね)

でも歓迎会場所へ行ってみたらそんな心配は無用だった。広いフリースペースでバーカウンターがあり、バイキング式に食事が並び、誰がいなくなっても分からない感じで、なんだかホッとした。いつもなら席に座っているから、トイレ行くふりをして帰っていたけど、これなら大丈夫そう。

「では、新任された大東部長の歓迎会を始めたいと思います! みなさん、好きなお酒をもってください!」

実はお酒は好きな方で、週末の金曜日と土曜日はお酒を買って、一人楽しんでいるけど、強くはないので一缶で酔ってしまう。私の楽しみは、週末に飲みながら好きな動画を見たり、本を読んだり、マンガを読んだりすることで、この時は本当の自分に還れる気がする。


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