唇から始まる、恋の予感
「大東部長からご挨拶をお願いします」

幹事から言われて部長が正面にたった。背が高く、姿勢のいい姿がひときわ目立つ。自分に自信がある人は、そこに立っているだけで人をひきつける魅力がある。
会場内を見渡すと、女子社員はアイドルを見るような目つきになっていた。

「今日はこのような会を開いていただき、ありがとうございます。アメリカ生活は非常に厳しく、日々戦いでした。日本に戻り、ほっとした部分もありますが、責任も感じています。力を合わせて、この海外事業部をもり立てていきましょう。今日は本当にありがとう。乾杯!」

力強いコールが終わると、会場はすぐに盛り上がりを見せた。男性が多いなかでもひときわ目立つ容姿。中心になれる人はやっぱりオーラが違うようだ。
日頃、遠巻きに見ている女子社員たちは、ここぞとばかりに部長にアタックしていた。
暫くその場で佇んでいたけど、さすがにお腹も空いてきた。

(そうだわ、いいことを思いついた)

私はお皿に料理を盛って、ランチで利用しているあの場所へと移動することにした。

(歓迎会が会社でラッキーだったわ。あの場所に夜、行けるなんて)

絶対に夜景が綺麗だと思う。早朝と昼にしか来たことがないけれど、いつか夜の風景も見たいと思っていた。


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