唇から始まる、恋の予感
俺は白石が帰った後で植草に電話をした。

「守秘義務があるんだからね。それ、分かってる?」
「ああ、感謝しているよ」

植草にはさせてはいけないことをさせてしまった。こんなことをさせないためにも、俺が白石に聞くと言ったが、

「ダメに決まってるでしょ!」

と、一喝されてしまった。

「社長とも話していたんだけど……」
「なんだ?」
「大東さんさ、片思いの最中なんだけど、大東さんは両想いだと思ってないか……てこと」
「そんなこと一ミリだって思ってないけど?」
「遠慮しがちに誘ったりしてるのは知ってるけど、話だけ聞くと、白石さんと付き合ってる風に聞こえるのよね。それってさ妄想と願望が分からなくなってない? 大丈夫?」
「なんだと? 危ないとでも言いたいのか?」
「そう」

まったく人聞きの悪いことを言って、白石一筋だと言ってほしい。

「社長と言い、大東さんといい、一人の女性を思い続けるなんて、男って純粋ね。顔からは全く想像できないけど」
「本当にズバズバ言うな」

俺と五代は似ているところは何処もないと思っていたが、植草が言うように、同じ女をずっと思い続け、一筋で、純粋な所は似ているかもしれない。
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