唇から始まる、恋の予感
朝のミーティングも終わり、何とか無事に昼休憩になった。先に帰ってしまったことを謝った方がいいと思うけれど、どうしてもそれができない。嫌なことは先に済ませてしまえばいいのに、いい大人が避けてばかりいてみっともない。
そればかりに捉われて、仕事中も疲れていた。
部長を横目に気にしながら業務をして、昼のチャイムが鳴ったと同時にデスクを離れた。
今日も暑い公園でランチ。
気が重かったせいか朝食を食べていない。

「お腹が空いた・・・」

私の空腹は、この量だけで足りるだろうか。

「いただきます」

お弁当を開いて、食べようとしたとき声をかけられた。

「やっと追いついた。一緒にいいかな?」

部長だった。

「あとを付けた訳じゃなくて、声をかける前にデスクから離れて言ったから必然的に後を追ってしまったというか」

昨日のことがあって、顔を合わせずらかったのに、また苦手な食事の時間に一緒になるなんて。でも今がチャンスだ、早く謝ってしまった方が楽になるし、部長にも気を使わせてしまっている。
お弁当箱のふたをそっと閉めて、落ち着かせるために深呼吸をした。みんなが平気で出来ることでも、私には難しいこともある。こうして人と交流することもその一つだ。
部長はコンビニで買ったサンドイッチを出して食べ始めた。
< 38 / 134 >

この作品をシェア

pagetop