唇から始まる、恋の予感
月曜日から始まって金曜日で終わる。同じことの繰り返しで、いつもの週末になった。
私の日常は変化もなく、いつも同じ一定のリズムを刻む。
一週間分のお弁当を作って冷凍保存し、ブラウスにアイロンをかけ、5日分の通勤服をセットする。セットというと大げさだけど、私のクローゼットは、仕事で着るブラウスとパンツ、休日に着るジーンズとカットソーだけで完結している。身なりに気を遣わなさ過ぎて、自分でも笑ってしまう。
出かける先は、スーパーやドラッグストアなどの生活必需品を買う店舗だけだから、まったく気を使わなくて済むし、それに今は服にお金を回す余裕はない。

「今日はなんだか落ち着かないな」

大好きな本を読んだり、テレビを観たりしていても落ち着かず、しなくてもいいことをしたりする。
なんでこんなに落ち着かないのだろうと考えたら、明日から大東さんが出勤するからだ。
特別な感情はもっていないけど、新入社員だった私の指導係が大東さんだったから、懐かしさはある。それに日本での最後の日に言った言葉が蘇った。

『そのままで待ってろよ、絶対にどこにも行くなよ』

すっかり忘れていたけれど、戻ってくると聞いて思い出した言葉だ。
そんな落ち着かない週末が終わり、やってきてほしくない月曜日になった。

「仕事でもそんなに絡むことはないから安心だけど」
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