唇から始まる、恋の予感
「それにしてもお腹がすいた・・・」

医務室は午後の4時で閉まってしまい、業務後に行くことが出来ないし、業務中ならまた許可を得て行かなければならなくて、その許可が欲しいと言うことが出来ない。だから犠牲にするのは昼しかなかった。
医務室に行き、ドアをノックすると先生の返事が聞こえた。

「失礼します」
「どうぞ」

前は気が付かなかったけど、医務室は病院のような無機質な感じはなく、先生のデスクと中心に丸い無垢のテーブルが置かれ、お花や雑貨がかわいらしく飾られていた。

「来るのが遅くなってすみませんでした」
「来てくれただけでいいわ。来たくない気持ちも分かるけど、診察を完了するには、ちゃんと問診をしなくちゃいけなくてね。大東部長に?」
「はい、そうです。すみません」
「そう……始業の時間も近いから早速聞くわね」
「はい」
「脈を見せて。体調は? あれから苦しくなったり、動悸が激しくなったりしなかったかしら?」

先生は私の脈を見ながら、問診した。誰にも邪魔されず、一人で過ごしていられればあの症状は起こらない。

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