唇から始まる、恋の予感
「ちょっと待ってて」
「はい」
ぼーっとそんなことを考えていたら、コンビニの駐車場に車は止まっていた。
思考力も低下するし、さっきから頭の中を駆け巡る角みたいに高く渦を巻いている生クリーム。甘いものが大好きな私は、それしか頭に浮かばない。ひもじいと碌なことを考えない。
「お待たせ。こんなもので悪いな、少し食べて」
部長はコンビニの袋を私に渡した。袋からは香ばしい揚げ物の匂いがした。
「フライドポテトだ。食べようか」
「……ありがとうございます」
「それとジュースも入ってるから好きな方を飲んで」
「あ、あの、おいくらですか?」
「お詫びだからおごりだよ」
「お詫びだなんて、ちゃんとお支払いしますから」
こう言うときは素直に受け取り、違う日に何か違う物をおごって返すものだということも知らなかった。部長という上司の立場、男として面子に恥を掻かせてしまったと、後になって反省した。
「じゃあ、運転しなくちゃいけないから食べさせて」
「え……」
「よそ見は危ないだろ?」
「それは」
「出るよ」
部長が赴任してからというもの、私は部長に振り回され、部長のペースにもっていかれている。
帰りの車の中もずっと部長のペースで、ポテトを食べさせ、ジュースも飲ませた。
でもそれがとても恥ずかしくて、ドキドキしたのはなぜだろう。
続かない会話をしながら、車は私のマンションに着いた。
「今日は大変なご迷惑をおかけしました」
深々と頭を下げて謝る。くよくよしてしまう私は、今日の出来事もずっと引きずるだろう。
「謝るのは俺の方だよ。本当に悪かったね、ごめん」
「とんでもないです」
「俺が言うのもなんだけど、ゆっくり休んで」
「ありがとうございました。気を付けてお帰りになってください」
「ありがとう」
車から降り見送ろうとした私に部長は、心配だから入ってと最後まで紳士で優しかった。
人は一人じゃ生きていけないというけれど、私はそんなこはないと思う。現に私は一人でここまで頑張って生きてきた。
会社の人間関係は社会的な義務であり、必要最低限のことだけど、仕事での関わりしかない。一人なら悩みだって単純で、自己解決出来るようなものばかり。
帰ってからだって、誰かの事で惑わされて眠れなかったなんてこともなかった。
「お茶漬けでも食べようかしら」
フライドポテトくらいじゃお腹は満たされないし、お腹が空いて眠れない。
「元の通りに生活がしたいな」
そんな望みがありながら、ベッドに入って目をつぶると、別れ際に見た部長の笑顔が浮かんだ。
「はい」
ぼーっとそんなことを考えていたら、コンビニの駐車場に車は止まっていた。
思考力も低下するし、さっきから頭の中を駆け巡る角みたいに高く渦を巻いている生クリーム。甘いものが大好きな私は、それしか頭に浮かばない。ひもじいと碌なことを考えない。
「お待たせ。こんなもので悪いな、少し食べて」
部長はコンビニの袋を私に渡した。袋からは香ばしい揚げ物の匂いがした。
「フライドポテトだ。食べようか」
「……ありがとうございます」
「それとジュースも入ってるから好きな方を飲んで」
「あ、あの、おいくらですか?」
「お詫びだからおごりだよ」
「お詫びだなんて、ちゃんとお支払いしますから」
こう言うときは素直に受け取り、違う日に何か違う物をおごって返すものだということも知らなかった。部長という上司の立場、男として面子に恥を掻かせてしまったと、後になって反省した。
「じゃあ、運転しなくちゃいけないから食べさせて」
「え……」
「よそ見は危ないだろ?」
「それは」
「出るよ」
部長が赴任してからというもの、私は部長に振り回され、部長のペースにもっていかれている。
帰りの車の中もずっと部長のペースで、ポテトを食べさせ、ジュースも飲ませた。
でもそれがとても恥ずかしくて、ドキドキしたのはなぜだろう。
続かない会話をしながら、車は私のマンションに着いた。
「今日は大変なご迷惑をおかけしました」
深々と頭を下げて謝る。くよくよしてしまう私は、今日の出来事もずっと引きずるだろう。
「謝るのは俺の方だよ。本当に悪かったね、ごめん」
「とんでもないです」
「俺が言うのもなんだけど、ゆっくり休んで」
「ありがとうございました。気を付けてお帰りになってください」
「ありがとう」
車から降り見送ろうとした私に部長は、心配だから入ってと最後まで紳士で優しかった。
人は一人じゃ生きていけないというけれど、私はそんなこはないと思う。現に私は一人でここまで頑張って生きてきた。
会社の人間関係は社会的な義務であり、必要最低限のことだけど、仕事での関わりしかない。一人なら悩みだって単純で、自己解決出来るようなものばかり。
帰ってからだって、誰かの事で惑わされて眠れなかったなんてこともなかった。
「お茶漬けでも食べようかしら」
フライドポテトくらいじゃお腹は満たされないし、お腹が空いて眠れない。
「元の通りに生活がしたいな」
そんな望みがありながら、ベッドに入って目をつぶると、別れ際に見た部長の笑顔が浮かんだ。