唇から始まる、恋の予感
私は感情も失くしてしまったと思っていた。
笑うことも、泣くことも、怒ることも、怒鳴ることもない強弱のない世界。
楽しいことなんか何ひとつなかったし、期待しない人生だったけど、大学に入ると、目標が出来た。

「そうだわ、整形手術を受ければいいのよ」

明るく、楽しい未来をやっと想像することが出来て、生きる希望も出来た。

「お母さん、整形手術を受けることにしたの。もちろん、お金は自分で貯めるし、負担はかけないから」
「え! 整形!?」
「そうよ、いつまでもこんな顔でいられないし、うじうじしたくないの」

中学でいじめにあってから、私には勉強と読書が友達だった。おとなしく影のようにいるしかない学校で私が出来るのは、勉強と読書だけだったから。
私のいじめが母親に知られてから、母親は長い間何もしなかった担任、学校を追及した。
それをされたら私はもっといじめられてしまうと、泣いてやめるように母親に頼んだが、母親の怒りはおさまらず、保護者会を開くような大事になってしまった。
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