唇から始まる、恋の予感
いじめはクラス全体だったこともあり、翌年のクラス替えがあるまで、休み時間と給食の時間を保健室で過ごし、授業だけクラスに戻るという態勢になったが、クラスメートの視線は「言い付けやがって」と訴えていて、担任だった先生は、担任を外された。
学校はもちろん、家族も私を腫れ物にさわるかのように、私に接した。
そんな私が出来ることは、空気になり迷惑をかけないことだった。
勉強と読書しかなかった私は、成績が良く、学年1位をキープしたまま、高校へと進学した。

「女子高にしたほうがいい」
「共学の方がいい」

両親はとても悩んでいた。女子だけでは、えげつないいじめがあるかもしれないし、共学では危険な、それこそ貞操を奪われるようないじめがあるかもしれないと。
いじめられることが前提だったわけじゃなく、全てにおいての危機管理だと両親は言った。
私からしたら、人と接することはしないのだから、そんなことはどうでもよくて、この先の就職に有利になるような学歴があれば、なんだって良かった。
高校生になると、私は既に冷めた人間になっていた。
世の中は斜に構えて見ていたし、遠足、修学旅行も、体調の問題で参加はできないと、親から学校へ申し出ていたし、なんの問題もなかった。
すでにこの時の私は、一人で寂しいとか、誰も私となんか組んではくれないだろうなとか、そんな期待をすることもなくなって、逆に親友や友達なんて、持つだけくだらないとも思っていた。
そんな私に整形手術は、最初に出来た希望だった。
希望が出来てからは、通帳にお金が貯まっていくのが楽しみで、節約も楽しかった。

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