唇から始まる、恋の予感
整形するんだと叫んだ彼女の言葉が頭から離れない。仕事も上の空になり、俺は植草がいる診察室に行った。
「白石は何か話したか? あれから気になってどうしようもなくて。何か話をしたか?」
「もう、私は守秘義務があるんだってば」
「そこを頼むよ」
「もう」
「礼はたっぷりとするからさ」
「詳しい話はやっぱり出来ないわ。それは分かって。でも……」
でもと言った植草は、突然ぽろぽろと泣き始めた。
「お、おい、おい、ど、どうした。おい、泣くなよ、嘘だろ、勘弁しろよ」
付き合ってた女は例外として、大人になってから女を泣かせた記憶はない。医務室に誰かきたら、俺が泣かせたと思われてしまう。
「お願い、白石さんを救ってあげて……諦めたほうがいいといったけど、違うわ。大東さんの好きと言う気持ちが彼女を救うはず。今ならまだ間に合う。早く救ってあげて」
「詳しくは聞かないけど、ざっくりとしすぎだろ」
「予想通り彼女はいじめられていたみたい。はっきりとは言わないけど、話の内容で確信したの。それで顔の全部を整形するんだと言ったのね」
「ほら……」
どんどんぐずぐずになっていく植草に、デスクのティッシュを渡した。
「それとね、白石さんは過呼吸の他に、もしかしたら醜形恐怖症という心の病気もあるかもしれないわ。彼女の状態を病気として診断するのは、メンタル専門の医師の診察が必要だけど、あれだけの美人なのに、言っていることがおかしいの」
「おかしいか……確かにその通りだな」
アメリカに行っていた5年という歳月は、とても長く、帰国してからの俺は、白石に会えた嬉しさで気持ちの制御が出来ずにいた。自分の気持ちばかりを優先して、大切にしたかった白石のことをないがしろにしていたんじゃないか。
だから、白石は恥ずかしがり屋、人見知りなんだと勝手に思い込んでいたんだ。
分かっていなかった俺に対応するのに、どんなに辛く大変だったことだろう。
「白石は何か話したか? あれから気になってどうしようもなくて。何か話をしたか?」
「もう、私は守秘義務があるんだってば」
「そこを頼むよ」
「もう」
「礼はたっぷりとするからさ」
「詳しい話はやっぱり出来ないわ。それは分かって。でも……」
でもと言った植草は、突然ぽろぽろと泣き始めた。
「お、おい、おい、ど、どうした。おい、泣くなよ、嘘だろ、勘弁しろよ」
付き合ってた女は例外として、大人になってから女を泣かせた記憶はない。医務室に誰かきたら、俺が泣かせたと思われてしまう。
「お願い、白石さんを救ってあげて……諦めたほうがいいといったけど、違うわ。大東さんの好きと言う気持ちが彼女を救うはず。今ならまだ間に合う。早く救ってあげて」
「詳しくは聞かないけど、ざっくりとしすぎだろ」
「予想通り彼女はいじめられていたみたい。はっきりとは言わないけど、話の内容で確信したの。それで顔の全部を整形するんだと言ったのね」
「ほら……」
どんどんぐずぐずになっていく植草に、デスクのティッシュを渡した。
「それとね、白石さんは過呼吸の他に、もしかしたら醜形恐怖症という心の病気もあるかもしれないわ。彼女の状態を病気として診断するのは、メンタル専門の医師の診察が必要だけど、あれだけの美人なのに、言っていることがおかしいの」
「おかしいか……確かにその通りだな」
アメリカに行っていた5年という歳月は、とても長く、帰国してからの俺は、白石に会えた嬉しさで気持ちの制御が出来ずにいた。自分の気持ちばかりを優先して、大切にしたかった白石のことをないがしろにしていたんじゃないか。
だから、白石は恥ずかしがり屋、人見知りなんだと勝手に思い込んでいたんだ。
分かっていなかった俺に対応するのに、どんなに辛く大変だったことだろう。