唇から始まる、恋の予感
何処に行くのかと聞けずにただ助手席に座っている。
部長に誘われて私は、またついてきてしまった。自分のやっていることをはたから見たら意味が分からないだろう。自分でも分からないのに、人が分かるはずがない。この前迷惑をかけてしまったからと自分に言い訳をして返事をした。断れないんではなく、誘いを受けるために迷惑を掛けたことを理由にしたのだ。
部長が連れてきてくれたのは、小高い山というか、丘のような場所だった。
会社から少し離れただけでこんな場所があるなんて、知らなかった。
「ここね、新興住宅地で人工で作った小さな山があるんだよ」
ここは山だったのか。どうりで坂を昇ってると思った。
「人工とはいっても、整備しただけで、元の地形は山だね」
「はい」
「社長と水越さんのことだけど」
「あ、はい」
「黙っててもらえないかな」
「はい」
「俺みたいな一般社員と違って、経営者だからさ」
「大丈夫です」
「ありがとう」
「いいえ」
「はい、お茶」
そう言って差し出したのは、ペットボトルの紅茶だった。お茶でもどうだろうと誘われて来たけど、本当にお茶が出てくるなんて。ただの誘い文句で、食事を拒否する私に対して考えに考えたことだっと思う。部長にそこまでさせるなんて、本当に酷い。でも、出来なくてもどかしい気持ちも分かってくれるだろうか。
「期間限定のぶどう味だって。きっと美味しいよ」
部長は優しい、そして、私はずるい。
部長の優しさにつけこんで、それに甘えている。
「……いただきます」
「ドライブをしていた時に偶然見つけたんだけど、都心部で空が広く見えるのは珍しいと思って、たまに来るんだ。夜は星が綺麗だし、朝は朝日が綺麗だよ」
「……」
「白石と見たかったんだ、そして、白石に見せたかったんだ」
「……」
「俺がアメリカに行く前に白石に言った言葉を覚えてるかな?」
「……はい」
「そのままで待ってろよ。って言ったはずだ」
「……」
「……そのままの白石がいいんだ」
部長に誘われて私は、またついてきてしまった。自分のやっていることをはたから見たら意味が分からないだろう。自分でも分からないのに、人が分かるはずがない。この前迷惑をかけてしまったからと自分に言い訳をして返事をした。断れないんではなく、誘いを受けるために迷惑を掛けたことを理由にしたのだ。
部長が連れてきてくれたのは、小高い山というか、丘のような場所だった。
会社から少し離れただけでこんな場所があるなんて、知らなかった。
「ここね、新興住宅地で人工で作った小さな山があるんだよ」
ここは山だったのか。どうりで坂を昇ってると思った。
「人工とはいっても、整備しただけで、元の地形は山だね」
「はい」
「社長と水越さんのことだけど」
「あ、はい」
「黙っててもらえないかな」
「はい」
「俺みたいな一般社員と違って、経営者だからさ」
「大丈夫です」
「ありがとう」
「いいえ」
「はい、お茶」
そう言って差し出したのは、ペットボトルの紅茶だった。お茶でもどうだろうと誘われて来たけど、本当にお茶が出てくるなんて。ただの誘い文句で、食事を拒否する私に対して考えに考えたことだっと思う。部長にそこまでさせるなんて、本当に酷い。でも、出来なくてもどかしい気持ちも分かってくれるだろうか。
「期間限定のぶどう味だって。きっと美味しいよ」
部長は優しい、そして、私はずるい。
部長の優しさにつけこんで、それに甘えている。
「……いただきます」
「ドライブをしていた時に偶然見つけたんだけど、都心部で空が広く見えるのは珍しいと思って、たまに来るんだ。夜は星が綺麗だし、朝は朝日が綺麗だよ」
「……」
「白石と見たかったんだ、そして、白石に見せたかったんだ」
「……」
「俺がアメリカに行く前に白石に言った言葉を覚えてるかな?」
「……はい」
「そのままで待ってろよ。って言ったはずだ」
「……」
「……そのままの白石がいいんだ」