唇から始まる、恋の予感
ふと思う。
仕事って自分のためだけじゃなくて、誰かのためにもするものなのかもしれないと。
俺の原動力は白石であったことは間違いないようだった。
ガキじゃあるまいし、これくらいのことでと思っていたが、自分で思うよりも相当なダメージが俺を襲った。
白石の告白は、ショック以上の何物でもなかった。
俺がガキの頃いじめられたと泣いたことは比でもなく、比べてはいけないレベルだった。
白石がどれだけの勇気を出して俺に話してくれたか、想像も出来ない。白石にとって忘れたい記憶を、俺の為に呼び起こして話をしたことは、させてはいけないことだった。
「俺はなんていうことをしてしまったのだろう」
辛すぎる過去を俺に話しているのに、涙も見せずに堂々と話す姿が健気で、抱きしめたくなる衝動を堪えるのがやっとだった。
「もう言わなくていいと言うべきだったな……」
話があると言われた時から、ある程度のことは覚悟していた。やらなければならないことはあったが、気になって仕方がなくて、仕事を放置して約束の場所に向かった。
白石の姿を見つけるとその後ろ姿は、自信なさげにうつ向いている姿と違い、いつものように近づくことが出来ずに、距離を置いた。
初めて正面からはっきりと白石の顔を見たようなきがするけど、本当に美しかった。
そんな美しさを自ら変えてしまうなんて、今となっては、思いとどまって欲しいと願うしかない。
普段は飲まないウイスキーを出して、グラスに注ぐ。
「……くぅ~……」
氷も入れないストレートのウイスキーは、喉元から食道を過ぎ身体の中を流れていくのが分かる強さ。酒の力でも借りれば気持ちはどうにかおさまるだろうと思ったが、追い打ちをかけるだけだった。
「……く、っそ……」
男の俺が泣くなんて。
悔しいのか、悲しいのか、可哀そうなのか、そのどれもがあてはまる複雑な感情で、多分、母親が死んだ時以来に泣いたような気がする。
全部を含めて白石を守って支えてやれるのに、俺にはもうその資格も権利もなくなってしまった。
まだ残る彼女の唇の感触を消すように、俺は酒を飲み続けた。
仕事って自分のためだけじゃなくて、誰かのためにもするものなのかもしれないと。
俺の原動力は白石であったことは間違いないようだった。
ガキじゃあるまいし、これくらいのことでと思っていたが、自分で思うよりも相当なダメージが俺を襲った。
白石の告白は、ショック以上の何物でもなかった。
俺がガキの頃いじめられたと泣いたことは比でもなく、比べてはいけないレベルだった。
白石がどれだけの勇気を出して俺に話してくれたか、想像も出来ない。白石にとって忘れたい記憶を、俺の為に呼び起こして話をしたことは、させてはいけないことだった。
「俺はなんていうことをしてしまったのだろう」
辛すぎる過去を俺に話しているのに、涙も見せずに堂々と話す姿が健気で、抱きしめたくなる衝動を堪えるのがやっとだった。
「もう言わなくていいと言うべきだったな……」
話があると言われた時から、ある程度のことは覚悟していた。やらなければならないことはあったが、気になって仕方がなくて、仕事を放置して約束の場所に向かった。
白石の姿を見つけるとその後ろ姿は、自信なさげにうつ向いている姿と違い、いつものように近づくことが出来ずに、距離を置いた。
初めて正面からはっきりと白石の顔を見たようなきがするけど、本当に美しかった。
そんな美しさを自ら変えてしまうなんて、今となっては、思いとどまって欲しいと願うしかない。
普段は飲まないウイスキーを出して、グラスに注ぐ。
「……くぅ~……」
氷も入れないストレートのウイスキーは、喉元から食道を過ぎ身体の中を流れていくのが分かる強さ。酒の力でも借りれば気持ちはどうにかおさまるだろうと思ったが、追い打ちをかけるだけだった。
「……く、っそ……」
男の俺が泣くなんて。
悔しいのか、悲しいのか、可哀そうなのか、そのどれもがあてはまる複雑な感情で、多分、母親が死んだ時以来に泣いたような気がする。
全部を含めて白石を守って支えてやれるのに、俺にはもうその資格も権利もなくなってしまった。
まだ残る彼女の唇の感触を消すように、俺は酒を飲み続けた。