唇から始まる、恋の予感
向き合う時
私には以前のような穏やかな日が戻っていた。秋だと感じられないほど暑かった日々も過ぎて、すっかり秋らしくなり、朝晩は肌寒さが感じられるようになった。脱いでも脱いでも暑かった夏が、嘘のようだ。長期の天気予想は暖冬とのことで、全国的に平均気温が高いと伝えていた。
暑くても一人で食べたいと探した公園も、暑さが和らいだことで、ベンチがサラリーマンで埋まることが多くなった。
風が吹けばカサカサと乾いた音をさせながら、葉が落ちていく。
呼吸しても熱風が肺に入り込んで、息を吸っているのか分からないような夏から、すーっと少し冷たさを含んだ風が、身体の中を駆け巡る季節になった。
日差しも弱まり、白く眩しい色から、オレンジ色の景色に変わった。
季節は少しずつ移り行くのに、私だけ冬のような寒さを感じていた。
少し変化をつけようと、私はお弁当を早く食べ終えて、会社の周りを散歩するのが日課になり、新しい発見をしたりと、小さいけれど楽しみを見つけていた。
「もっと昼休みを有効に使えば良かったな」
会社のまわりは良いところが沢山あったのに、周りに目を向けずにいたせいで、ちいさな変化も見過ごしてしまったような気がする。
過ぎてしまった時間は戻らないんだから、前に進むしかない。せっかく東京の中心で働いているのだから、いい時間の使い方をしたい。
移り行く季節を感じ、新しい発見をする。いつもうつ向いて歩いてきた私は、地面しか目に入っていなかった。
木の葉は緑から、黄色、茶色へと変化していくのに、それすらも知らず、葉が落ちていく。紅葉の始まりも知らずに、いつの間にかいつも地面にたまった落ち葉が目に入っているだけだった。下ばかりを見て歩く私が顔をあげられなかったのは、道行く人の視線が私を見ているようで怖かったからだ。
だけどそれは被害妄想で、みんな自分のことに忙しく、私のような地味な人間に興味があるわけがないのに、他人が私に目を向けていると思い込みをして、まったく自信過剰もいいところだ。
部長が私を好きだと告白してくれたことで、私は新しい世界の扉を開いた。目標を達成するという思いが、こんなに力になるなんて思いもよらず、長い時間を無駄にしてしまったなと滅多にない後悔をする。
同じ部署で働く以上、部長とは毎日顔を合わせる。廊下ですれ違ったりするけれど、部長とは挨拶程度の会話をするだけだった。
私のオアシスだった場所に朝と昼に行けるようになり、お腹が空くこともなくなった。
この普通の日常に戻るのだ望みだったはずなのに、何故かとても寂しく感じていた。
(寂しく感じたのはいつ以来かな)
部長の気持ちに真摯に向き合うために、私は過去を振り返らなければならなかった。話をしている最中も、胸が苦しくなって、呼吸が早くなりそうに何度もなったけど、部長の目を真っすぐに見つめ、向き合わなければという強い想いが、弱い私に勝った。
暑くても一人で食べたいと探した公園も、暑さが和らいだことで、ベンチがサラリーマンで埋まることが多くなった。
風が吹けばカサカサと乾いた音をさせながら、葉が落ちていく。
呼吸しても熱風が肺に入り込んで、息を吸っているのか分からないような夏から、すーっと少し冷たさを含んだ風が、身体の中を駆け巡る季節になった。
日差しも弱まり、白く眩しい色から、オレンジ色の景色に変わった。
季節は少しずつ移り行くのに、私だけ冬のような寒さを感じていた。
少し変化をつけようと、私はお弁当を早く食べ終えて、会社の周りを散歩するのが日課になり、新しい発見をしたりと、小さいけれど楽しみを見つけていた。
「もっと昼休みを有効に使えば良かったな」
会社のまわりは良いところが沢山あったのに、周りに目を向けずにいたせいで、ちいさな変化も見過ごしてしまったような気がする。
過ぎてしまった時間は戻らないんだから、前に進むしかない。せっかく東京の中心で働いているのだから、いい時間の使い方をしたい。
移り行く季節を感じ、新しい発見をする。いつもうつ向いて歩いてきた私は、地面しか目に入っていなかった。
木の葉は緑から、黄色、茶色へと変化していくのに、それすらも知らず、葉が落ちていく。紅葉の始まりも知らずに、いつの間にかいつも地面にたまった落ち葉が目に入っているだけだった。下ばかりを見て歩く私が顔をあげられなかったのは、道行く人の視線が私を見ているようで怖かったからだ。
だけどそれは被害妄想で、みんな自分のことに忙しく、私のような地味な人間に興味があるわけがないのに、他人が私に目を向けていると思い込みをして、まったく自信過剰もいいところだ。
部長が私を好きだと告白してくれたことで、私は新しい世界の扉を開いた。目標を達成するという思いが、こんなに力になるなんて思いもよらず、長い時間を無駄にしてしまったなと滅多にない後悔をする。
同じ部署で働く以上、部長とは毎日顔を合わせる。廊下ですれ違ったりするけれど、部長とは挨拶程度の会話をするだけだった。
私のオアシスだった場所に朝と昼に行けるようになり、お腹が空くこともなくなった。
この普通の日常に戻るのだ望みだったはずなのに、何故かとても寂しく感じていた。
(寂しく感じたのはいつ以来かな)
部長の気持ちに真摯に向き合うために、私は過去を振り返らなければならなかった。話をしている最中も、胸が苦しくなって、呼吸が早くなりそうに何度もなったけど、部長の目を真っすぐに見つめ、向き合わなければという強い想いが、弱い私に勝った。