ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
スタッフに案内され、着いたのはラウンジの中でも奥にある個室の空間。
そのインテリアや調度の豪華さから、ここはVIPルームなのだとすぐにわかった。

「まずはシャンパンだよね?」
「え、ええ。でも・・・」

たくさん飲むことはできないけれど、美味しいお料理とともに楽しむお酒は私だって好きだ。
でも、民族衣装である真っ白なカンドゥーラを着ている彼がお酒を飲む姿を想像することがどうしてもできない。
すると、どうやら私の思いが伝わったらしい彼が、身に着けたカンドゥーラを見てクスッと笑った。

「ああ、そうだね。いくら人目がないと言っても不自然だよね」
そう言って立ち上がる。

「いえ、私は別に・・・」

お酒を飲まないイスラムの民族衣装を着ている彼が飲酒をする姿は、確かに不自然ではある。
でも、海外のパーティーではそういう人もいるし、そのことが悪いとは私も思わない。

「こっちにいるときは必要に迫られてカンドゥーラを着ているんだ。ちょっと着替えてくるから、待っていてくれる?」
「ええ」

とりあえずの飲み物と前菜を注文して、彼は部屋から出て行った。
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