ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
ただでさえ豪華なハマド空港のファーストクラスラウンジのその中でも特別感のある個室ダイニングスペースで、私は男性を待ちながら運ばれてきたシャンパンを口にした。
部屋に設けられた大きな窓からは空港に停まる飛行機が見え、ここが世界のハブ空港であることが実感できる。

「すごいわねえ」

漆黒の闇に浮かぶ飛行機のライトを眺めながら、私はグラスを口にする。
黄金に輝く液体に、小さな小さな泡が一本の筋になって上がっていく様は本当に優雅で美しい。
きっとこのグラスのシャンパンだってものすごい金額がするのだろうと思うと、今自分のいるこの場所が夢の中のように感じられた。
そして、人生でもう二度とここに来ることはないだろう。
東京に帰るとすぐに転職の誘いをもらっている大手商社三石商事の面接を受けることになっているし、そのまま就職が決まればまた忙しい日常が始まる。
だからこそ、この旅行は自分へのご褒美であり次の生活へのけじめでもあるのだ。
< 14 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop