ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
「ごめん、お待たせ」

男性の登場は思いの外早かった。
時間にすると10分ほどだろうか、さっきまで着ていたカンドゥーラからスーツに着替えて現れた姿は、どこから見てもビジネスマン。
少しエキゾチックな印象はあるものの、普通に仕事で出会えば疑うことなく日本人と思ってしまいそうな外見だ。

「なんだか、別人みたい」
意識することなくこぼれた感嘆の声。

「よく言われるよ。でも、僕にはこっちの方がしっくりくるんだ。何しろ生まれも育ちも日本だからね」
「へえー」

今の格好でそう言われれば、違和感は感じない。
でも、さっきまでのカンドゥーラ姿が印象に残りすぎて頭から消えそうもない。

「こっちにいる間はカンドゥーラを着ている方が何かと都合も良くてそうしているんだ。日本では普通にGパンとTシャツで歩くよ」
「へえー」

まさに驚きの連続。
世の中には色んな人がいるのねと私は実感していた。
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