ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
「成田便だよね?」
「ええ」

この時間にここにいて日本語を話すアジア人となればそれ以外にはないように思うが、確認されてしまった。

「僕も日本に帰るところなんだ」
「そうですか」

ハサンについて興味もあるし、聞きたいことだってたくさんあるけれど、聞くのが怖い気がしてつい距離をとってしまう。その位、彼は強烈なオーラを放っている。

「ねえ、凪」
「はい」

前菜の後メインのロブスターをいただいている途中で、ハサンに呼ばれて顔を上げた。

「君から見て僕は何人に見える?」
「え?」

困った。
ハサンのきりっとした顔立ちは、はっきり言って一般的日本人とは少し違う。
だからと言って外国の人でもない気がする。

「僕はね、どこに行っても外人なんだよ。子供の頃からずっと」
「そんなあ・・・」

ハサンが言いたいことはなんとなくわかるし、私のように平凡な人間には計り知れないような苦労があるのだろう。
でも、それがハサンのアイデンティティーであり個性なのだと思う。
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