ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
搭乗準備もすすんだところでスーツの集団が乗りこんできて、私と元カレの間にある通路を通り機体後方にあるビジネスクラスの席に入って行く。

「すみません」

当然身を乗り出していた元カレは通行の邪魔で声をかけられてしまった。

「ああ、すみません」
元カレの方も頭を下げて身を引いている。

そして、通り過ぎていった日本語を話す一団の最後尾にいた一人が私たちの横を通り過ぎた後元カレの後ろの席に座った。

あっ。
私は姿を見て声が出そうになり、慌てて飲み込んだ。
そこに現れたのは、さっきまでラウンジで一緒にいたハサンだった。

「オリエンタル物産の人間だな」
「え?」
元カレの呟きを聞き取ることができず、聞き返した。

「さっきの集団だよ。先頭の人物は、オリエンタル物産の中東支社長だ」
「へえー」
別に興味はないけれど、そうなんだ。

オリエンタルと言えば、三石財閥傘下の物流会社。
最近では中東中心にオイルビジネスで業績を伸ばしているって聞く会社だ。
待って、さっきの人たちと一緒に入って来たってことはハサンもオリエンタル物産の関係者ってことかしら。
でも、今回は私用でドバイに来たって言っていたし・・・
< 25 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop