ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
私は小学生の頃に病気で父を亡くし、それ以来母と姉の暮らしだった。
離島の診療所を医師として守って来た父のことを島の人たちはみんな知っていて、私たち家族も大切にしてもらった。
だからかな、寂しいと思ったことはあっても不便を感じたことはなかった。
ただ、不慣れな土地で必死に私と姉を育てる母にも、一生懸命に勉強して父の跡を継ごうとしている姉にも、頼ってはいけないと思っていた。
その思いは東京に出てからも同じで、一人虚勢を張って足を踏ん張るように立っていた気がする。
そんな性格だから、どんなことが起きても「大丈夫だよ」と言ってくれるポジティブ思考な元カレを好きになったのかもしれない。
当時の私にはそれがただの世間知らずだってことを見抜くことができなかった。

「どうしたの、眠れない?」
私が起きていることに気が付いたのか、ハサンが私の方を向いた。

「うん、でも平気」
私は笑って答えた。
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