「みんなで幸せになると良いよ。」
明らかに今までとは反応というか温度が違った。
声の大きさも。


「ケイイチですけど…。どうかされました?」


彼女は子供の手も離してしまって、その手で鼻先と口元を覆い隠すように顔に置いた。


『いや、その…私ケイイチっていう名前の人探していて…。』


何を言っているんだろうか。若い母親はそれ以上言葉を続けるでもなく、全身をざっと見てくる。


「探偵?警察?」


いきなりのことで驚いてしまい単語だけの会話になってしまう。
これといってお世話になるような心当たりはない。


『違います、警察も探偵も。ただ個人的に探してるんですけど…あなたではないです。』


ホッとした。

警察とか弁護士とかいう言葉を聞くとやましいことはなくても焦ってしまう。


「びっくりした…っていうか小心者やし犯罪なんてできひんのに。」


安心もあってか、無意識に笑顔になる。

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