「みんなで幸せになると良いよ。」
『たとえば…あたしたち…?』

ヒイラギが訝しそうに母親を見る。
『野田』と呼び捨てた彼女は多分ヒイラギより親しい仲にあったようだ。
それを感じ取ったヒイラギは少し『嫌悪』という色を薄く塗ったような顔をしている。


『はい。野田啓一のこと教えて欲しくて。私、彼のことあまり知らなくて、それで…。』


「けーいちー、けーいーちー!」


啓くんは大人の立ち話に飽きてお母さんのスカートを引っ張った。


「啓くん、もうちょっとだけ待…」


言いかけた言葉が遮られる。



パーン!
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